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初めてのモデルの時、彼に案内されたのは、学校の近くの海だった。海岸は想像していたよりも、磯系の何かの腐臭が酷くて、ゴミがたくさん棄てられていて――、砂浜の方は綺麗だったけど、どこか歪で、作り物みたいだった。
モデルになりたてでポーズの決まらない、固い笑顔の私の写真を一葉、彼はきらきらと表情を輝かせて撮った。
その静かで鈍い光沢をともなった不思議な瞳は、撮られる側の私よりも、ずっと輝いていたと思う。
だから私はその日、決意をした。
私は少しずつ、専属モデルの名に恥じないように、光源のような彼に相応しくなろうとした。
さようなら、古い自分。
私はサナギから蝶になりたかった。
何度目かの撮影を終え、ようやく撮られる姿がさまになってきた時、ふと海辺での写真のことを思い出した。
私は勢いと以前の自分が写った恥ずかしさも手伝って、海辺での写真を、こっそり部室のアルバムから剥がして、どこかに仕舞ってしまった。
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