婚活女子の本気

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婚活女子の本気

 有野優士(ありのゆうじ)さん、27歳。年収1500万。身長180cm。程よく付いた筋肉。そして何より誰もが振り返る端正な顔立ち。話した感じ、性格も良さげ。    ハイスペックな男性に出逢えると有名な婚活アプリに登録して約3年。やっと見つけた、超優良物件。  今日こそ絶対に成功させてみせる! 私・野崎美華(のざきみか)24歳は静かに闘志を燃やしていた。  そして気合いを入れる為に、お手洗いで念入りに化粧直し。  仕上げに真っ赤な口紅を塗り、彼が待つ窓際の席に戻る。 「お待たせしました。お料理、美味しかったですね」 「ですね。お腹も一杯になった事ですし、この後軽くバーでもどうですか? おすすめの店が近いくにあって」 「是非!」    初デートにして、2軒目に誘われてしまった! 今までは大体1軒目止まりで、デート自体も次に続かない事が多かった。  化粧と服装、食べ方など幻滅されないよういつも以上に気を遣って、会話もなるべく途切れないように頑張った。  やっぱり男の人に求めるばかりじゃ駄目。女も選んで貰えるように努力しないとね。  ゆっくりと席を立った優士さんに続いて立ち上がり、2人でお会計を済ませた。躊躇なく割り勘を申し出る事により、男に奢らせずきちんと払う女という事をしっかりアピールする。  私だって彼ほどじゃないけどそれなりに稼いでいるのだからこれくらい屁でもない。 「女の子にお金を出させるなんて俺かっこ悪いな……次のお店は奢らせてください」 「気になさらないで下さい。男女平等にいきましょう!」 「そんな事を言う女性に出会ったのは初めてです」  素敵な笑顔を向けられ、自然と頬が緩む。思っていた以上に好感触かもしれない。 「ここです。お洒落な雰囲気がすごく気に入っていて」 「本当だ。とても素敵ですね!」  高層階にある大人の雰囲気が漂う高級そうなバーに案内され心が躍る。  カウンター席に並んで座り、彼が私の分も一緒に適当に注文してくれた。そのスマートな振る舞いに思わずキュンとする。何から何まで本当にかっこいい。 「すみません、少しだけ席離れます」 「あ、はい」  お互いに1杯目を飲み干し、2杯目を頼んだところで彼が席を立った。お手洗いの方に歩いていく後ろ姿を見送った後、すっと静かに置かれた綺麗な色のお酒を眺める。  そしてマスターの目を盗み、鞄からこっそり出した“白い粉”を彼が注文したお酒に少量入れた。  ーーこれで完璧!  ほくそ笑みながら、自分のグラスに口をつける。うん、このお酒も美味しい。 「お待たせしました」  柔らかい笑顔で戻ってきた優士さんは、グラスを持ち上げ半分ほど飲んだ。その様子を見て、内心ガッツポーズ。  それから趣味やドラマの話で盛り上がり、あっという間に“2杯目”は空になった。もう少しかな。優士さんの様子を窺いながら話を続けていると、彼の大きな瞳が段々とトロンとしてきている事に気づく。  やっと“おくすり”が効いてきたようだ。 「優士さん、そろそろ帰りますか?」 「そうですね……すみません、何だか急に眠気がきてしまいまして」 「いいえ、大丈夫ですよ。お仕事で疲れてる中、長時間付き合って下さりありがとうございました。今日とても楽しかったです」 「疲れてるのはお互い様ですよ。こちらこそありがとうございました。今度はホテルのデザートビュッフェでもいかがですか?」 「是非行きたいです!」  次の約束もできちゃった。やった、満足!   ……で終わらないのが婚活女子の本気。  バーを出てタクシーを捕まえ、今にも寝てしまいそうな優士さんを家まで送り届ける。  そしてタクシーから降りて驚愕した。 「タワマン……」  思っていたよりもめちゃくちゃ良い所に住んでるではないか。眠いとはいえ家まで教えてくれたという事は、もしかして玉の輿も近い?    期待を胸に秘めつつ、フラフラの彼を支えてエレベーターで10階まで上がり一番近くの部屋に入る。  流石に最上階ではなかったがそれでも真ん中よりは上で、ガラス張りの部屋からの景色はすごく綺麗だ。 「……さて、と」  都会の夜景をひと通り楽しんだところで、今日のメインの時間だ。  先程隣の寝室に寝かせた優士さんの元へゆっくり近づいていく。一人暮らしにも関わらずダブルベッドだなんて、すごく贅沢。  将来、一緒にここで寝るのかな? などと幸せな妄想を繰り広げながら、ふかふかのベッドに腰掛ける。 「優士さん、」  彼の耳元で囁き、サラサラの黒髪を優しく撫でる。  薄く開いた唇に自分のを押し当て、すかさず舌を挿入し彼の舌を絡めとった。
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