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映画の中の彼は、常に悪の帝国の親玉だった。
『ロケット戦士、これで終わりだ』
『ぐわぁぁぁぁぁ!』
上映後、彼はファンサービスでサインに応じ、終わると控の場所に戻った。
ファンの中の若い女性陣は黄色い声でさえずった。
「残忍でセクシーなディオ様」
「ああ、ディオ様に乱暴なことされたい」
「嫌だと言ってるところを無理やり」
「いやーっ! そんなことになったら死んじゃう!」
「“死ぬがいい!”」
「キャーッ! それはディオ様のお言葉!」
「そのあとおみ足で踏まれてしまう」
「駄目! そんなことあったらいけないよ」
現在帝国で流行してるのは、独善的な正義の味方が敗れ、国を思って自ら悪徳に身を沈める真の指導者が勝利するといった内容のものだった。
指導者役は常にディオカスト。彼は映画の中でも百戦錬磨の帝王を演じた。残忍な側面のある王者っぷりが国民の心をがっちりつかんだ。彼の俳優業は、国民を映画と政治のとりこにするのに大いに役に立っていた。
エヴァは控えの場所で女子達の様子を見ていた。彼女は彼が花形俳優である以上、緩めのメディア統制が続くことを知っていた。
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