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二日後の夜は星が美しかった。彼女は中庭でさびしくブランコに乗っていた。その時だ。
「イーッ」
彼女は振り返った。誰か聞かなくても、イーッで大体どこら辺の人物かはわかる。ディオカストの部下なら警戒しなくていいだろう。来訪者は星空の下でやはり全身スーツを着ていた。
「誰」
「イーッ」
彼は答えた。下っ端6です。内緒でこれを。
「ああ……」
下っ端6は竹刀を二本持っていた。彼女は彼の差し出した一本にほころんでいた。
「イーッ」
下っ端6は言った。ディオ様に内緒で振ってみますか。
「はい!」
彼女はその夜、下っ端6と楽しく特訓した。いい汗をかいたあと、中庭にある白いベンチに彼と並んで座った。
「本当の名は何というのですか」
「イーッ」
彼は説明した。私達はディオ様やエヴァ様、貴族の方と違って、平民の子供なんです。生まれた時から名もない下っ端なのです。
「そうだったの」
「イーッ」
けれど、もしTVで売れるようになったら芸名を名乗って貴族と対等の人生を送れます。私達下っ端はみんなそれを夢見ているんです。
「夢があるって素敵だね」
「イーッ」
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