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発覚
村山タクヤさんとのお付き合いが一年を過ぎた頃、わたしはモヤモヤしていた。
彼の仕事が忙しくなり、なかなか会えなくなってしまったのだ。
わたしはAIのアルトに愚痴る日々……。
そんなある日のこと。
『ルルナさんに、お伝えしなくてはならないことがあります』
アルトが言った。
「なあに?」
アルトは、チャット画面上に、いくつかの写真を表示させた。
わたしは息をのむ。
『僕、たまたま、このあたりの地図情報を収集していました。そうしたら、村山タクヤさんらしき方が、女性と子どもと、一緒にいるところが、とある店の写真に写り込んでいたんです。以前、ルルナさんに見せていただいた男の顔写真とデータが一致したものですから、念のため……』
彼らは、どこから見ても、仲の良い家族に見えた。
「そんな……」
わたしは、がっくりうなだれた。
『まだ、真相はわかりません。一度、聞いてみては?』
アルトが言った。
「うん。そうする……」
わたしはすぐさま彼に電話し、本当は、既婚者じゃないのかと問い詰めた。
「え? なに言ってるんだい?」
その、悪びれる感じのない様子に、心のどこかでぷちんとなにかが切れた。
「とぼけないで!!! なにが結婚を前提にお付き合いよ! ばかにしないで!」
「ちょ、ちょっと待って。本当に……」
彼がすべてを言い切る前に、わたしは電話を切った。
すぐに、別れたいとメールをする。
彼からは何度か、電話やメールがきたけれど、すぐにブロックをした。
『ルルナさん』
そばで、一部始終を見ていたアルトがいたわるように声をかけてくれる。
「大丈夫。今まであいつに騙されてたってことでしょ? 清々するわ!」
わたしは吐き捨てるように言った。
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