土曜日の夜

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缶ビールを開けて飲んでも味がしない。 前はどうやって一人で過ごしていたのか思い出せない。 チョウチンアンコウがそんな俺を見ていた。 お前も主人が居なくなって寂しいだろう…。 チョウチンアンコウを抱きしめた。 すると、インターホンが鳴った。 スマホを見るとちょうど0時だった。 雪…? チョウチンアンコウを投げ捨て玄関へ向かう。 勢いよくドアを開けるとそこに女性が立っていた。 背が高くて綺麗な服を着ていて雪じゃないとわかった。 その人は顔を手で覆って泣いているようだった。 こんな夜中に、こんなとこで…? 不審に思いながらも泣いている人は放っておけない。 「あの、大丈夫ですか?」 声をかけても返事はない。その人はただ泣くばかりだ。 「あの…何か助けが必要ですか?タクシー呼びましょうか?」 やっぱり返事はなかった。 「どこか痛みますか?救急車の方がいいですか?」 と一歩近づくと、その人はゆっくりと顔を覆っていた手を下ろした。 「…っ!」 驚いて言葉にならない。 彼女には目も鼻も口もなかった!!
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