単身アパート突撃

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重い荷物を手に移動すると、毎月帰って来る智希の大変さも理解出来る。 電車で長時間の移動も乗り換えも、駅からアパートまでの道のりもそれなりにきつい。 引っ越しの時は車だったから実際に駅から街を歩くと、何処に行っても同じコンビニはあるしファミレスはあるし、住宅街も特に変わった家が建ってる訳でもなく、道路も同じで日本は日本、歩いているとそう違いはない事に気付く。 (当たり前だけど…。) 観光地は別にしてよっぽどの田舎とか昔ながらの街並みとかでなければ、街って似たり寄ったりよねーなんて暢気に考えながら街を歩いて、智希のアパートの前に到着すると子供に返った様な少しのワクワク感とドキドキ感を感じながら、『コーポ』と書かれた看板の奥にある入り口へと足を進めた。 入り口はドアのないタイプで裏の駐輪場まで真っ直ぐ行ける様になっていて、入って右手に郵便物入れがあり、三階建てなので小さいけど駐輪場の前にエレベーターが一つ、その横に階段があった。 部屋も単身向けで狭いので階段も狭いしエレベーターも小さい。 智希の引っ越しの際はベッドが一番苦労したのを思い出した。 結局、エレベーターに入れるより二階まで階段で行った方が早いとなり、引っ越し業者のお兄さん二人がパイプとマットレスを手際良く運んでくれたなぁ、なんて思い出しながらエレベーターで二階に上がり、智希の部屋の前で少し停止する。 (なんて言う?最初の言葉?………来ちゃった?おはよー?……早くはないわね。うーん。お届けでーす!とか?) 考えてどれもピンと来なくて、智希の反応を見てから決めようかなってインターホンを押した。 小さな声が部屋の中から聞こえて、 「どなたですかぁ?」 ていう少し面倒そうな声と共にドアが開いた。 「潮田真由子と申します。」 にっこり微笑んで言うと、茫然とした顔で一瞬停止してから、智希は驚いた顔をする。 「えっ!?真由子?どうした?なんかあったのか?」 驚いた顔から焦った顔になり、クスクス笑いながら部屋に入れてもらった。 「今、洗濯始めたとこで掃除はまだだから汚いと思う。来るって連絡くれたらもっと早い時間から綺麗にしてたのに…。」 とブツブツ言いながら椅子に掛けられた洋服や二人用のテーブルの上のカップ麺やペットボトルを手にして行く。 「いいのよ。汚くて。今日は応援に来たんだから!」 鞄の中から持って来たエプロンをして腕捲りをし、まずは作り置きを冷蔵庫へ入れる。 (あー冷蔵庫も後で掃除だなぁ。) 開けてそう考えてから、部屋の掃除からするねと掃除機を出してもらった。
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