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手伝うと言う智希にいいからと断って、一応、彼の部屋だしと考える。
「こっち片付いたら寝室?そっちの部屋掃除するから見られたくない物とか、捨てられたら困る物とかあったらテーブルの上にでもまとめておいて?触らない様にするから。あ、見ない様にするから。」
言い方を変えて言うと、困った顔をしながら隣の部屋に移動する。
「仕事の書類くらいかなぁ?見られて困る事はないけど捨てられるのは困るな。」
と言いながら作業する背中が見えた。
単身向けアパートだけど6畳程のフローリングにカウンターキッチンが付いていて、簡易な戸を隔てて隣に同じく6畳のフローリングの部屋がある。
仕切りの戸は取り外しが可能で一部屋としても使えるそうだ。
余り大きな換気扇がキッチンに付いていないので、料理をしたらスーツに匂いが付きそうだと智希は戸で仕切って使っている。
というのも大の肉好きで自炊といえばフライパンで焼肉だからだ。
リビングというのかダイニングというのか、取り敢えず小さなテーブルとテレビとテレビの前に2畳分のラグが敷いてある部屋を片付け、ざっと掃除機をかけて隣に移動する。
「真由子、俺やるよ。やるつもりだったし。」
申し訳なさそうに言う智希に笑顔で大丈夫と答えた。
「言ったでしょ?応援に来たって!仕事関係の物は聞くし勝手に捨てたりしないから安心して。智希はゆっくりしててよ。せっかくの休みでしょ。」
「んーなんか悪いな?じゃあ…真由子が来る少し前まで寝てたから朝ごはんまだなんだ。なんか食べるな。」
「そうなの?じゃあお昼にしようかと思って持って来たお弁当あるから食べる?」
掃除を途中に冷蔵庫前に置いたままの鞄を手にテーブルの椅子に置き、中から作って来たお弁当を出した。
「おかずね。大した物じゃないけど朝早かったから、子供達の朝ごはんも兼ねて卵焼きとウィンナー、おにぎりが梅干しとツナマヨ、これお味噌汁。残ると勿体無いから淹れて来た。」
トントンと説明しながら出すと、おお、と声が返って来て嬉しそうにお礼を言われた。
「先に一緒に食べようか?少しお昼には早いけどお夕飯も早くすればいい事だし。」
「うん!あ、お茶!お茶位は淹れる!」
バタバタとお湯を沸かしに行ってくれたのでクスッと笑いながら、タッパーを開いて割り箸を出した。
(来て良かった、やっぱり一人では大変だったんだ。)
そう思って斉藤さんのアドバイスに感謝した。
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