幸せな日常

2/3
前へ
/21ページ
次へ
「ご馳走様、支度するわ。」 子供達を見送ってから朝食を食べていた夫は、食べ終えた茶碗を流しに運び振り向いて言う。 「お粗末でした。こんなに遅くていいの?」 ベランダで洗濯物を干し、ガラス戸を閉めながら訊き返すと奥の部屋に入って行く背中が大丈夫と答えた。 夫のお茶碗を洗いに行くと終える頃にスーツに着替えた夫がダイニングに出て来た。 「昨日遅かっただろ?今日はゆっくりでいいって言われたんだ。昨日の接待で大きな契約取れたから。」 「凄い!良かったね。何回も接待してた会社だよね?」 「そう。やっとって感じだけどさ、取れて安心したよ。」 「そうだよ。接待しても駄目な事もあるんだからそう考えたら凄いよ。おめでとう。」 私から見た夫は余り上手に世の中を渡って行けない人だ。 人付き合いも上手ってほどではなくて空気は読めるけど、読み過ぎて遠慮してしまったり腰が引けてしまったり、強引さは全くない。 優しいけど優柔不断な人と言えなくもない。 でも相手の事をちゃんと見て考えてあげられる人で、必死に頭を下げる姿は私には実に真摯で好感の持てる姿だった。 (きっと今回も凄く頑張ったんだろうな。) そう思うと感謝しかなくて夫に軽くハグをする。 「今日は智希の好きな物作って待ってるね。」 「おお!楽しみ。ありがとう。行って来るね。」 「行ってらっしゃい。」 玄関の外の廊下に出て手を振って見送った。 夫の智希は三十六歳、私は三十四歳。 結婚十年目、子供は二人。 そろそろマイホームか分譲マンションでも欲しいなって節約と貯蓄をしている年代。 住まいは賃貸マンション?コーポ? 6階建の3階部分。 優しい夫に不満はなく、夫も私に不満はないと言ってくれている。 不満どころかいつも美味しいご飯をやりくりしてくれてありがとう。僕の妻は最高ですと抱きしめてくれたりする。 誕生日もクリスマスもプレゼントを忘れた事はない。 私が忘れていても、ホワイトデーのお返しまでくれる。 子供達以上に妻に甘い夫でどんな時も頼りになる人で、夫の愚痴なんか言えと言われても言えないくらいに、私には完璧で勿体ない位の人だ。 (本当に結婚して良かった。) 彼と結婚出来た事は私には幸運でしかないと思っている。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

613人が本棚に入れています
本棚に追加