忙しなさの中の空虚

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忙しなさの中の空虚

いつもと同じ位の時間、定時で上がれば19時過ぎには帰宅する夫だがその日は連絡なしの22時過ぎに帰宅した。 ほろ酔いの夫は先に風呂に行くと向かい、私はスーツを片付け、いつも通り玄関の下駄箱の上の鍵置きに鍵を置くのと同時に置かれたままのスマホを回収して、ダイニングテーブルの上に移動させておく。 夫はスマホを落としたらいけないからとロックは掛けているが、いざという時、自分に何かあった時、連絡が取れない人がいたらいけないからとロック番号は夫婦で共有。 ーー『多少の趣味の画像はプライベートという事で見ないようにするか知らないふりをしよう。』ーー なんて言っていたけれど、夫のフォルダには私や子供達、同僚に送ったと思われる何気ない写真ばかりで、時々知らない女の子(漫画やフィギュアに紛れて会社関係の女性)、テレビのアイドルぽい子が荒い画像で残されている程度。 これを許さなければ私のフォルダの『〇〇君』が浮気と言われてしまう。 推しのアイドルは浮気ではなく尊き癒しだ。 アイドルの写真や若く可愛い部下の写真くらいは認める。 変に触るなとか見るなとか言っちゃうから過剰に反応しちゃうのにね、と思いながら多少の隠し事は目を瞑るつもりでスマホは触ってもあまり見ない。 機種変したら弄りまくるけど…それは仕方ないよね。 (新しい物って触りたくなっちゃうからぁ。) 鼻唄混じりで台所で準備していると良いタイミングで夫が姿を現した。 「いい匂い…あぁ、家だなって感じするな。」 ダイニングテーブルの椅子を引き、本当に安心したという顔をしていうので堪らず笑いながらお味噌汁を夫の前に置いた。 「飲んで来たならご飯は軽くにする?お味噌汁だけにしておく?」 「あんまり食べてないから食べたい。いい?」 「いいわよ?連絡なかったからお夕飯の用意はしちゃったからあなたの分もあるわ。ご飯軽めにしておこうか。」 「そうだね。」 余り食べてないとはいえ、おつまみも食べているだろうしお腹いっぱい食べるよりは軽めで就寝が健康には良い。
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