忙しなさの中の空虚

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「はぁ〜。」 とため息と同時に休憩室のテーブルにお弁当を置いて席に座る。 (転勤…単身赴任かぁ。会社が単身でと言っているのについて行きますと言っても単身の賃貸物件分の補助金しか出ないのよね。単身赴任、ある意味有り難いのよね。子供達の転校ないし連れて行くとなると忙しさ倍増で智希一人なら一人で準備してくれるから楽は楽なのよねー。。でもなぁ・・・単身赴任かあ。) 頭を抱えてお弁当も開けずにもう一度ため息を吐いた。 「どうしたの?」 前の席に座り、お弁当を開けながら聞いて来たのは青果部でパートとして働いていて仲良くしている斉藤さんだった。 「大した事じゃないの。」 「そう?何か不安があるなら一人で考えないで話した方が楽になるわよ?まぁね、お金の事では全く助けてもあげられないんだけどさ。話を聞くだけなら出来るから、ね?」 斉藤さんは私より十歳以上歳上で確か高校生と大学生のお子さんがいると聞いた事がある。 明るくて人付き合いもいいが、口も硬く仕事もテキパキとするのにずっとパートのままを選んでいる控えめで信用出来る人だ。 「何か言いたくなったら愚痴でも聞いてくれます?」 「勿論だよ!いい人は疲れるからね。愚痴くらい言わなくちゃ心が折れてしまう。私もそうだからよく分かるんだよ。」 「確かに…斉藤さんはいい人です。」 と私が頷くと、 「そこはあんた、自分で言いますか?ってツッコマないと!」 とケラケラと笑い、わざと明るくしてくれているんだなと思った。
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