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「違う!本当に違うんだ。若い女の子と浮気してると思っているのだよな?確かに唐揚げはその子に貰ったし部屋にも行ったけどそんな仲じゃないんだ。」
「じゃあどんな仲なのよ?」
「いや…それは。」
言いにくそうに何か言い訳を考えている顔だなと、智希の顔をじっと見て観察し、テーブルの上のスマホを表に返して指で操作し、そのまま二つの指でスマホを智希の方へ押す。
「それ、証拠の動画。智希で間違いないでしょ?」
「……いつ、こんなの?えっ?もしかして僕はずっと真由子に疑われていたって事?だからこんな動画…。」
驚きの表情をしてからショックを受けたという傷付いた顔を向けられて言われ、私の揺れ動く感情に火がついた。
「どうして智希がそんな顔するの?ショックで悲しくて苦しくて傷付いたのは私の方よ!!これを見た日から暫く夜も眠れないし智希に聞きたくても勇気は出ないし怖いし!信じたいのに信じられなくて自分でも意味不明な罪悪感に苛まれて!!悩んで悩んで…子供達を最優先に考えるって決めたの。智希と私の子よ?二人を守るためなら私は裏切った智希を捨てるわ。」
途中から涙が溢れて来て振り払う様に拭いて、最後はまた冷静な自分に戻って言えた。
「ごめん…真由子に疑われていて興信所とか?調べられたんだって思ったら…ちょっと、傷付いた…けど…そうだよな。三年もこっちにいて家になかなか帰れないじゃ…疑いたくもなるよな。」
悲しそうな表情をするので興信所には頼んでないとボソッと答える。
「高校の同級生に再会したの。彼女、あちこちの支店に行っていて、こっちの支店にも一週間位の予定で時々来ているそうなの。その友人が智希を見かけてこの動画を撮ってくれた。最初から疑っていた訳じゃない…私は…疑いも、していなかったの。これを見た時も…信じたくなかっ…けど……智希はいい笑顔を向けているから…。」
(何で智希が泣きそうな顔するの?泣きたいのは私の方…。)
智希の顔を見て私の感情のダムは決壊した。
それでも負けない様に私は再びこのダムに土嚢を置く。
何度も落ちる涙を指で手のひらで拭い、止めようと努力した。
そんな私を見て今にも涙が落ちそうな顔になった智希が、突然テーブルに頭をつけて謝り始めた。
「ごめん!真由子。不安にさせた僕が悪かった。だけど本当に浮気じゃない!それは信じて欲しい!」
その言葉に私の涙は引っ込み、キョトンとしたまま智希を見て呟く。
「…………だから!何もしてません、て…そんなの信じられないから!」
(負けるもんか!)
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