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私はその手を強く振り払う。
「遊んでないよなって…智希は遊んでたって事よね?世間や親がどう言おうと私は夫婦は一心同体、運命共同体だと思う!人生を共に歩いて行こうと約束をした運命共同体。どちらが上とか下とかじゃなく支え合う信頼出来る異性。同等の立場で物を言えば智希がした事は私にもする権利はある。智希がここで一人で苦労して生活していると思うから私も一人で子供達の面倒を見て頑張って来た。だけど智希が一人暮らしを楽しんで女と遊んでるなら、私にも月に一度でも子供達から離れて若い男性と遊ぶ権利はある。それを智希にとやかく言われたくない!!」
「な…何を言ってるんだ、真由子!あ、遊んだのか?真由子がそんな…嘘だろ?」
私の様子を伺う様に青い顔でじっと見つめてから、智希ははぁ、と安堵のため息を吐いた。
嘘が分かったんだなって…ちょっと残念だったけど気付いてくれた事は嬉しかった。
「良かった、嘘なんだな。」
安堵のため息の後でへにゃと真顔を崩して微笑み、智希が私に向い言う。
それに対して嬉しいけれど腹が立つのだ。
「ええ、嘘ですよ!今はね。」
声を張って強がりを言うと智希がまた中腰になりテーブルが揺れた。
「今はって!!」
「だってそうでしょ?どうして私だけ苦しい思いばかりしなければいけないの?ただでさえ父親がいないから子供達に気を配って普段は父親役と母親役をしなくてはいけなくて、智希の体も心配だからこっちにだって時々来て、子供達も休みは遊びに行きたいだろうから出来るだけ私だけで連れて行って、この三年、智希が長く帰れる時も家でゆっくり出来る様に私なりに智希の事を考えて優先して来た!それなのに智希は土曜の度に若い女とあんないい笑顔で笑って過ごしてた!そう考えるだけで心がぼろぼろになるのよ?智希がいい顔して遊んでるなら私だってウキウキウハウハしてもいいはずでしょ!!」
はぁはぁと肩で息をして、言ってやったとスッキリした気分で智希の顔を見ると、目元を隠して小さく呟いていた。
「ウキウキ…ウハウハって…してない、僕はしてない。」
そう呟いて目元の手を退けて真面目な顔をした。
「真由子、ウキウキウハウハはしてない。話したくなかったのは浮気をしていたからじゃなく、僕が最低の人間だって情けない奴だって真由子に知られたくないからだ。」
「最低?智希が?情けない人間って…情けない事は誰にでもあるでしょ?そんな事で私は智希を嫌いになったりしないわ。むしろ言い訳を重ねられる方が嫌。」
嘘は嫌と睨むと智希がきちんと椅子に座り直す。
「話すよ、全部。」
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