忙しなさの中の空虚

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単身赴任二週間で土日休みを利用して智希は家に帰って来た。 土曜に出勤する事もあれば、水曜あたりで休みが取れる事もあるらしい。 智希はビール会社の元は企画営業部にいた。 新作ビールの発表会や宣伝、スーパーなどでの企画をする部署だけれど不運な事に流行った病のおかげで大規模な宣伝は人を集めるからと出来なくなり、営業部へと異動した。 やっと普通に宣伝出来る様になり、元部署に戻るかと思いきや、営業部のままその腕を買われて他支店への異動が決まったのだった。 戻れば出世、それは嬉しいだろうけど新しい職場はそれなりに大変な様で、二週間で帰ってなんて余程一人暮らしが大変だったのだろうと好きなだけ寛いで欲しいと思った。 「あ、そうだ。これお土産。向こうの地酒とうちの新作ビール。感想くれたら嬉しい。」 子供達と遊んでいた途中、思い出したのか大きな鞄を引っ張りファスナーを開けて、ゴソゴソと出したのが瓶の地酒と缶ビール二本だった。 「智希…重いのに鞄に入れて来たの?新作ビールなら買って冷蔵庫に入れてあるよ。」 クスッと笑いながらも嬉しいと呟いて、これを飲もうとコップを取りに行き直ぐに智希の缶ビールを一本開けて注ぐ。 「夕飯前だから二人で半分こね。」 「おお!嬉しいな。」 乾杯する両親を見ても子供達が何も言わないのはが実は通常運転で、お風呂上がりの晩酌に夫婦でビールは週に何度かしていた事で、子供が産まれる前からお酒好きの二人で変わったお酒を見つけた時やちょっとした嬉しい事で乾杯していたのだ。 お酒好きの私が妊婦の時は智希も一緒に断酒してくれていた。 「ん…苦味があまりなくて若い人にも飲みやすそうね。しっかりと麦芽の味わいはあって、、うん、おいしい。」 「そう?そうか、美味しいか。良かった。」 嬉しそうに話す智希に私も自然と笑顔が溢れた。 夕飯の準備をするからと先に子供達と智希でお風呂に入ってもらい、私は地酒を少しだけ戴きながら下拵え済みの料理を仕上げた。
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