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「御用聞きは鈴木麻由香さんに頼まれたのではなくて専務に頼まれたから浮気じゃない、そう言いたいのね?でも父親がそんな事頼む?それに転勤が延びたなら先ずは私に話すべきでしょう?」
「まだ内示が出た訳じゃないから決定ではないんだ。本社でそんな話が出ているのだと思う。だから真由子に話す前に決まる前になんとかしたかった。専務にしてみたら僕は既婚者だし独身よりは安心で事前にしっかり釘も刺されているし、社内での妻への溺愛振りは聞いてると言われたから…安心だと思ったんだと思う……。彼女のSNSを見られないからってお願いされて、鈴木さんに頼まれた本棚の組み立てを手伝ったり本を大量に買うからって荷物持ちしたりした時に、僕のSNSに写真をアップした。専務が見られる様に。」
「はぁぁぁぁぁぁ〜〜安心って……。」
と額に手を当てて盛大にため息を吐いた私を見て、智希がビクッと体を動かしたのを私は目の端で捉えていた。
(そういう問題ですか?専務…と聞きたいけど……どっちも余裕がなくて…正確な判断が出来てなくない?男親って…。)
そういう気持ちを込めてもう一度ため息を吐いた。
「つまりはあの鉢植えも大量の本もBLも、鈴木麻由香ってあの彼女の部屋の写真って事…そうか…だからBL。」
だから植木も智希の部屋にある訳がないし、智希が読まなさそうな本の大量購入も絶対買わないだろうBLもと、納得と共に脱力をしてしまう。
「……BLってなに?」
キョトンとした顔の智希に聞き返されて余計に脱力し、私はテーブルの上に半身を倒した。
「ま、真由子?」
「大丈夫。BLに関しては今度ゆっくり…ええ、もうたっぷり教えてあげるわ。」
上半身をテーブルに倒したまま、顔を横に向けて言い、そのまま暫くいると横に移動して智希が私の顔を見る。
「大丈夫?信じてくれた?」
(可愛い目線しやがってコノヤロウ!)
と思いながらも負けたくないから反対側に顔を向ける。
「完全に信じられないわよ。専務のお嬢さんが本当で専務のお願いが本当でも、一人暮らしの女の部屋に入る意味が分からないし入った部屋で二人で何してたって誰にも見えないんだから!専務にだって言わなきゃ分からないのだから!」
と、私の後頭部を見ているであろう智希に言うと、智希が小さくそうだよね、と言ってから椅子に座り直す音が聞こえた。
「どうしたら信じてくれる?」
「……………どうしたら?」
(………どうしたら信じてくれる?えっ?どうしたら?………やだ!!浮気を疑っていたから浮気だったらどうしようかとは思っていたけど、違ったらどうしようなんて考えてなかった。でも…浮気じゃない?本当に?嘘を言っていない事は…分かるんだけど…。)
静かに体を起こしこの動揺を悟られない様に平常とした顔をして智希を見て、真面目な『今考えてます風』を装った。
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