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「この動画の後、部屋に入った後の事を全部話して。最初に部屋に入った日、何時に入って何をして何を話して何時に帰ったか!二度目も三度目も全部話して。」
『どうしたら信じてくれる?』に対して私が出した答えは『すべてを知りたい』だった。
遠くに住んでいても見えなくても、他の女の部屋でも浮気でもそうじゃなくても、私は智希の、夫の総てが知りたいのだとそう思ったのだ。
「何時?えっ?何を話したかなんて覚えてないけど?」
「全部よ、全部!!」
言い捨てると思い出そうしている智希を横目に立ち上がり隣の部屋に行き、私はさっき片付けた本や資料の中から智希の書きかけがあるノートを手にして直ぐに戻り、それを智希に見せた。
「ねぇ、このノートってまだ使う?」
「使うって言えば使うけど、別に新しいノートもあるから。」
「書きかけのは必要ない?」
話しながら鞄を膝に置き、鞄から離婚届を記入する為に持って来たファスナー付きの小さめの筆入れを出してテーブルに載せる。
「書いてあるのはもう破いてもらってもぐちゃぐちゃにしてもいいけど…何書くの?」
三色ボールペンを手にカチっと音を鳴らす私を見て、智希が首を傾げて不思議顔で聞き返していた。
「このノートもらうね。今から事情聴取するから……はい、一回目から何時何分に部屋に行って何をしたか…あ、その前に専務に頼まれたからって良く彼女が智希にお願い事したわね。おかしいわよね?そこから話してもらいましょうか。」
全てを明らかに…と私はノートを開いてしっかりとボールペンを握り智希を見つめる。
「えっ…、あの……何時何分とか覚えてないし…あの、事情聴取って。」
お夕飯食べてからにしない?の声に私はテーブルを平手で叩く。
ーーバン!!
「潮田智希!浮気の現行犯で逮捕されているんだ!疑いを晴らしたいのなら協力しなさい!それが夫の義務だろう!!」
「は、はい!!」
「お夕飯はちゃんと遅くなってもカツ丼を出してやる。始めるぞ。」
刑事さながらに言うと、智希は困った顔をしながらも右斜め上を見て考えながら話し始めた。
ゆっくりだったので私はそれをラッキーと思いながらノートに記録した。
しっかりとスマホとレコーダーで録音しつつだった。
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