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モダンなテーブルに昭和レトロなレースが敷かれ、その上には繊細な花がら模様のお洒落なコーヒーカップが湯気を立てる。
流れるレコードの歌謡曲も相俟って、まるで半世紀前にタイムスリップしてしまったかのようである。
「お待たせしました。それでは、ご要件をお伺いします」
一人で写真館を営む相模は、慣れた手付きでお茶請けのドーナツを差し出しつつ、対面の革のソファに腰掛けて澤井様と向かい合った。
「本日はお時間を頂き、ありがとうございます。改めまして、聖南スタジオの澤井と申します。御園斎場の羽田さんからの紹介で参りました」
気を改めるように頭を下げながら澤井様はそう自己紹介をして、名刺と共に持ってきた黒の折り鶴を崩して広げる。
その中にはマイクロSDカードが隠されていた。
「おやおや、同業者の方でしたか…」
名刺を確認した相模は笑みを溢しつつ囁く。
この写真館では、依頼主の要望に困った同業者からの依頼も少なくはない。
「依頼主の宮野様は先月、弊社と提携するホテルで結婚式を挙行されたのですが、その際にトラブルがありまして…」
そう言って思わず、言葉を呑んだ澤井様は徐ろに持ち寄った数枚の写真をテーブルに並べた。
そこに写っていたのはスズランをモチーフにしたドレスを身に纏ってとても嬉しそうに笑う女性と、その写真とは対象的に硬い表情で申し訳程度に笑みを浮かべた悲しげな同じ女性の姿だった。
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