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彼女、ReMeは相模の妻、恵美が創り出した仮想現実世界【RefrainMemories】に生きる人工知能であり、彼の秘密のアシスタントである。
―――否。
彼女は元々、相模の妻そのものだった。
今より十数年前、悪性脳腫瘍により余命宣告を受けた恵美はこの世に残される相模の為、当時、開発途中だった【RefrainMemories】の中に自らの記憶の全てを刻み、その世界の管理を行う人工知能として生き続ける道を選んだ。
しかし、その代償として彼女は残されていた人間としての生を投げ捨てることとなり、更には【RefrainMemories】の最終試験時、読み込まれた膨大な世界感を形成するデータが暴走。濁流のようなその波に彼女は呑まれた。
数日にも及ぶ復旧作業により、データの中から何とか引っ張り出された恵美だったが、その事故により魂とも呼べる記憶データを砕かれ、最早、彼女は彼女では無い存在となってしまった。
相模は恵美だった彼女の抹消を考えたが、妻の姿と声を真似るそれを殺す事は、到底出来なかった。
事故から一年が経った頃、次第にそれが人格を形成したことで、相模は彼女に【RefrainMemories】の頭文字からReMeと名付けた。
そして、アシスタントとして写真屋の仕事を手伝ってもらいながら人の心を学ばせ、いつの日にか妻、恵美として蘇る日を密かに待ち侘びているのである。
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