ママと僕の 昼ご飯

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ママと僕の 昼ご飯

「お弁当を持っていくよりはさ。ココで食べなよ。」  ココは会社から2分の僕の実家。作ってくれるのは今年58歳のママ。 今日は、肉サラダ饂飩。昨日は肉サラダ素麺。で、明日が肉サラダ生拉麺で。その次が肉サラダ拉麺。トッピングは同じで麺だけが違う。お肉は歩いて5分のスーパーの特売品。  「あ?確かに先月は美味いって言ったよ。」 「ほら。早く食べて。会社、戻りなさい。」 「あのさ。饂飩、替え玉で もう1杯。」 間違ってる?い~や。間違っちゃいない。僕の会社はやたらパートさんの多い小物製造業。会社の食堂には50代以降のお姉様方がわんさかいる。 「ねーぇ。拉麺の次は、お蕎麦でいい。」 「あー。でも生シリーズの方が好き。」 この生活を続けて、そろそろ3年が経つ。 「これからもよろしく。」 「え?何だってぇ」  そりゃ。言いましたよ。3年前は世界的な流行り病で、ギュウギュウ詰めの社食でコゲコゲのハンバーグ2個にモヤシとコーンと胡瓜の 肉サラダ定食が500円。それも50歳過ぎのお姉様方へのお茶汲みサービス付き。なんて言うからさ。そりゃ言うさ。  小物製造業たって作っているのは、キャラクターグッズ。夏海ちゃんの担当は今は何とか言う亀とイルカの縫いぐるみ。お前はデザイナーでその会社に就職した筈、だったよね。  2杯目の饂飩が後少し。今日も暑いね。温度は32度。しかも湿度68%。また雨だね。キッチンの窓からドンヨリ重なった雲が見える。 「じゃ、拉麺の次は生蕎麦ね。行ってきまーす。」 卒業記念に折角2つ向こうの街に自立したのにさ。お前の人生は半径10キロかい。ウチで昼ご飯を食べる為に、そのキャラクター制作会社とやらに就職をした訳じゃ。無いよな。
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