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「はい、缶コーラ」
よく冷えた缶を手渡されて、「あ、ありがとう」と、受け取る。
「あそこの歩道橋の上で話そうか。花火も見えるし」
近くにある、もうあまり使われていない老朽化した歩道橋が指差されて、二人で階段を上がって行った。
そうして彼は、橋の柵に手を掛けると、
「──僕はね、未来から来たんだ」
いきなりに、突拍子もないことを口に出した。
「……冗談はやめてよ。ちゃんと話がしたいのに」
てっきり茶化されているのかと思ったけれど、
「違う。本当になんだ。信じてくれないかな」
彼は真剣な顔で、そう話した。
「……わかった。未来からとかよくわからないけど、勇気が言うのなら、信じるよ」
その表情と口調に抗いがたいものを感じて、彼の言葉を半信半疑ながらも受け入れた。
「わかってくれて、ありがとう。僕は、約二十年後の未来から、タイムスリップしてきたんだ」
「タイムスリップ……」
とっさには信じがたいその一言をぼんやりと呟いて、私は花火が上がる空を見るともなしに見上げた。
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