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「それは……、」と、彼が一瞬辛そうに顔を歪めて、口ごもる。
「それは、あいつのせいだよ……。あいつ……今井っていう男は、結婚してから、豹変するんだ……。あなたに暴力を振るい、やがて生まれた僕にまで……。お母さんであるあなたは、必死で僕を庇おうとしてくれたけれど、あいつの虐待は酷くなる一方で……」
「そんな……」
彼の語ることが、現実であるとも思えなかった。なぜなら今井先生は面倒見がよく優しくて、それで好きになったはずだったから──。
「……優しいはずって思ってるでしょ? だけどそれは、結婚する前までのあいつの表の顔だから。結婚をして、あなたがもう離れないとわかってからは、それこそDV三昧だったから」
耳をつんざく音を立てて打ち上がる花火を仰ぎ見ながら、私は呆然として何も喋ることができないでいた。
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