0人が本棚に入れています
本棚に追加
その後は、3人で話が盛り上がっていたから、1人で携帯をいじっていた。
勝手に歌う訳にもいか―初めて遊ぶ、どころかちゃんと話す人の前で歌う度胸というか勇気は―ない。
一応分かりそうな話題には、頑張ってついて行こうとしてみたりしたけど、邪魔しちゃ悪いと思って黙っていた。そもそもほとんどわからなかった。
五十嵐さんは時々話を振ってみてくれるけど、曖昧に反応していると、2人に五十嵐さんは呼び戻され、話はまた3人で進む。
かえって、その気遣いのおかげで距離を感じるようで、明るい場所にいるのに、空気が重たかった。
数時間後、カラオケの入り口の前で解散する。
3人はまだそこで話していたけど、居たたまれない気持ちになって、私は先にその場を離れた。早く逃げたくて足早にその場を去った。
帰り道にある川沿いの道を一人歩いていると、川のせせらぎが耳を包み、心をくすぐる。今はこの音だけが、私の心を癒してくれる。
ちょっと自惚れていたのかもしれない。最近仲良くなったけど、所詮は最近なんだと。
それにきっと、この間のショッピングモールでのこともあるし、どこかで面倒に思われていたのかもしれない。
3人で楽しそうに話していたシーンが思わず頭をよぎってくる。あの中に入りたいのではない。だけど、思い出を共有できるのは、なんだか羨ましかった。
出会う前の時間を取り返すことは出来ない。だから話についていけなくたって、寂しくなったって仕方ない。そもそも寂しくなる方がおかしいのだ。
頭ではわかっていても、靄がかった心が晴れるには時間が必要だった。
最初のコメントを投稿しよう!