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パンフレットの説明を見ながら回っていると、こういう意味が込められているのか、こんなことがあったからこのカタチになったのか、という新たな発見がある。直接そういう話にはならないし―私が聞かないだけなのかもだけど。
気がついたら五十幡さんとは距離が出来ていた。慌てて追いかけようとすると、誰かに話しかけられていた。楽しそうに、だけどこの場所だからか口元を抑えながら話していた。
誰なんだろう
そこはかとなく不安を感じた。
私は"それ"をなるべく視界に入れないように、気づかれないようにそっとホールを出た。
近くのベンチに座る。勝手に帰る訳にはいかない、という冷静な判断は辛うじて出来ていた。
ふぅ、と小さく息を吐いた。
胸が苦しかった。長距離を走ったあとのような、小学校の頃に好きな男子と話したあとのような。
でも、疲れたからでは無いし、嬉しいからでも無い。ただただモヤモヤとした、釈然としない感情が渦巻いていた。
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