八番目の怪談

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「イイね。あたしも試してみたかったんだ。だけど一人じゃ白けるしぃ」 「じゃあ、決まり」 「うん、後でよろしくねぇ」 掲げたピンクのスマホを振る腕と、悪ガキのノリでクロスタッチする。アニメのヤヒロもよく仲間と交わしていた挨拶だ。 「じゃあ夕食後、すぐに出れるようにしとくねぇ」 言い置いて陽気にしながらも独りで帰る姿は、対して深く物事を考えない様に見せかけて、自分がいかに楽をして男に寄生して生きて行くかを考えているのを隠している後ろ姿だ。 作り込んだカワイイの中にあるどす黒さが透けて見えるから、彼女はここでも一人なのだろう。 問題行動を起こそうとする口車に乗るのも、楽をする点以外は深く考えないから。 ここでも問題を起こしたら、本当に社会のつま弾き者になるのに。 それにしても、末広がりと縁起の良い数字が悪意を含む怪談に化けたのは、人の本質が悪だからだろう。 流布し過ぎた怪談では、死を連想させる四の並びばかりがクローズ・アップされるけど。 夕方でもまだ人の多い四時四分よりも、倍の数字である八時ハ分の方が確実に日も暮れて恐怖感も増すだろうから語られ始めたのか。
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