八番目の怪談

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先に転校して来ていても一人で校内をふらつく事が多かった彼女は、秘密の隠れ場所があるんだとも告げていたけど。 彼女みたいに誰も知らないって場所へ潜り込んだりする奴が怪談の正体なのだろう。 人など居ないと思っていた場所に、人影があれば噂は簡単に立つのだから。 「あ、来たぁ」 だが、ビックリした事にヤヒロは校門前で堂々と待っていた。 「お前、秘密の場所があるって」 「だってぇ、入り込むにも、いつもの場所が修理されちゃっててカギが閉まっていたんだもん。それにタカヒロが来るまでそんなに待っていないよ?」 あっけらかんと言い放つが、自分の軽率さに気づいてなさ過ぎるのは問題だ。 「先生とかに見つかったら、忍び込めないじゃないか」 思わず門扉の前から校内をうかがったが、明かりがついているのは用務員室だけだった。 見つかっていないと胸を撫で下ろすが、ヤヒロは全く悪びれずに僕の腕を掴んで校庭を突っ切ろうとする。 「ねぇ、早くしないと八時八分だよぉ」 さすが、空気を読まない奴。 けれど目的に気を取られた上に夜の暗がりが、僕の呆れた表情を彼女から隠してくれた。
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