八番目の怪談

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馬鹿かと一瞬、怒鳴りそうになったのを飲み込んだのさえ気付いていないらしく、グイグイ校舎に向かって行く。 「ちょ、見つかるって」 「大丈夫、こっちは灯りないもん。見えないってぇ」 確かにここらは暗い。明るい側からしたら見えないか。 「ねえ、タカヒロはどこか入り込めそうな場所分かる」 無防備に体を押し付けてくるヤヒロ。その体の柔らかさと匂いに、囁かれた言葉を聞き逃しそうになった。 「検討付けていた場所が、ヤヒロと同じ場所じゃないのを祈っといて」 「じゃあ、ムゲン様に祈っとくぅ」 クスクス笑いながら、今から呼び出そうとしている怪異に祈るだなんて、やはり空気が読めていない。お願い事の前借りをする様な奴に、ムゲンさんが呼び出される訳がないとは考えないのか。 まあどっちにしろ、噂話を本気にしたいんじゃない。目的は別なのだとさすがにこの無知も分かっていての言葉だろう。 校舎の裏手に周り込み、角の家庭科室の窓枠に手をかける。 「ここも壊れていたんだぁ」
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