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「とーもちゃん、お疲れ!」
ライブが終わると、ふみちゃんは持っていたタオルを私の頭に乗せて、手でワシャワシャ
とかき混ぜる。最高のライブに花を咲かせてテンションが上がっているらしい。ふみちゃんのタオルは汗のいい香りがした。
「髪がぐしゃぐしゃになるよー」
「ごめんごめん。ともちゃん、いい味を占めてたね」
「タイムスリップしてやり直せるのならあの場面だけをやり直したい」
「残念。それどころか、今日のライブは録画されているから永久に残っちゃいます」
「そんなー。今すぐカメラを破壊してやる」
「何でよー。今日の一番の見どころでしょ。下着姿で出てきたアイドルは初めてじゃない? 動物柄は特に」
「ぶり返さないでー!」
私たちの様子をいつきちゃんとえりちゃんは笑いながら見ていた。二人ともライブが終わってホッとしているような様子だ。
それにしても、下着の件は本当に失態だ。まじでどうしよう。
会場にはお母さんとお父さんも来ていた。それだけじゃない。多分、おばあちゃん、おじいちゃんもいたのではないだろうか。家に帰りたくない。帰ったら絶対気まずくなる。
「それで、初めてのライブはどうだった?」
ふみちゃんからの言葉に私は我に帰る。見ると、ふみちゃんはおろかいつきちゃんやえりちゃんも私の方を穏やかな目で見ていた。私は頭に乗ったタオルを首へと回す。
今日の感想。そんなの決まっている。チームのみんなが一体となった踊り。ファンの優しい歓声と歌を引き立てるライト。ファンと一緒に作り上げた最高の舞台。
パッと晴れやかな表情になると、彼女たちに向かって言った。
「最高に楽しかった!」
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