六月三十日③(遠山)

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六月三十日③(遠山)

歩道を真っ直ぐ進んでいると、遠山の脇をさっきの女子が自転車で走り抜けていった。 子猫にはもう飽きたのか、遅刻しそうなことに気付いたのか。 そんなことを思いながら細い路地を抜け幹線道路に出る。 横断歩道のない大きな交差点に差し掛かった。駅に向かうには歩道橋を渡らなければならない。 この歩道橋は通路の幅が広く、自転車も通ることが出来る。 遠山はいつも通り歩道橋を上り頂上に着くと気付いた。 さっきの女子が自転車を停めて制服姿の男子と話している。 その男子はちょっとヤンチャそうな見た目で、茶色に染めた髪の毛先をいじりながらニヤついていた。 二人の脇をすり抜ける時に聞こえたのは、男子が駅への道を教えているような内容だった。 反対側から降りる時に少し振り向いて二人の様子を覗き見てみると、話は終わったようで男子は勢いよく走って階段を駆け降りているところだった。 女子は自転車を押しながらこちらに歩いてきていたので、遠山は見ていたことがバレないように急いで階段を降りた。
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