六月三十日⑥(遠山)

1/1
前へ
/11ページ
次へ

六月三十日⑥(遠山)

突然のリアルな逮捕劇に呆気(あっけ)に取られていると、動けないでいた女子高生が遠山の前まで歩いて来て言った。 「遠山君、大丈夫だった?」 え、誰?って思ったものの、目の前にいる女子高生の美少女っぷりにビビってしまった。 何で僕の名前知ってるの?とか 大丈夫って何?とか 色々聞きたいことはあったけど、見惚(みと)れて声が出なかった。 「でも、良かった。これからもよろしくね」 それじゃ一緒に駅に向かおっか、と遠山の前を歩きだす美少女。 状況がよく飲み込めていないけど、この美少女についていけば何か分かるかもしれない。 そう思った遠山は美少女の後を追う。 歩道の脇では高層マンションを建設していて、重そうな鉄骨の束をクレーンで上に吊り上げている。 その時、急に強風が吹きつけて鉄骨が大きく揺さぶられ、鉄骨が落ちそうになっている。 前を歩く美少女は頭上の事態に気付いていない。 やばい、助けなくては! 急いで駆け寄り美少女を遠くへ追いやる。 美少女を安全圏に出したことに安堵した遠山は上を見上げる。 何本もの鉄骨が降ってきた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加