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六月三十日①(茉莉亜)
鉄骨の下敷きになった遠山の死体を見つめ、膝から崩れ落ちた茉莉亜は零す。
「また……、ダメだったの?」
通り魔で終わりだと思っていたのに……。
道路に飛び出した子猫を救うためトラックに撥ねられ死んだ遠山君。
子猫が道路に飛び出さなければ遠山君が轢かれることもないと思った茉莉亜は子猫を見張った。
歩道橋で、走ってきた男子に突き飛ばされて階段を転げ落ち頭から血を流して死んだ遠山君。
走ってくる男子のタイミングを遅らせられれば、遠山君とぶつかって転げ落ちることもないと思った茉莉亜は、既に知っている駅への道を男子に聞いた。
駅で電車待ちの列から押しだされて特急列車に轢かれて死んだ遠山君。
押した張本人の気を引くため、元教え子を装って話しかけた。
遠山君の学校に着いたら茉莉亜は入れないから、自分の高校でヤキモキしながら下校時間を待った。
早めに自分の学校を抜け出し遠山君の学校の前で待つ。
出てきた女子高生を捉まえて「今日、学校で大きな出来事なかった?」って聞いてみたけど「何もなかったですよ」という返事に安堵する。
放課後の帰り道、遠山君を尾行していると商店街で手に包丁を持った男が茉莉亜に近付いてきた。
恐怖に震え上がった茉莉亜は一歩も動けなくなった。
私、殺される、と思った時、遠山君が庇ってくれた。
遠山君は背中を刺されてその場で死んだ。
ここに通り魔が現れるのを知っていた茉莉亜は事前に警察に連絡しておいた。
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