☆00. 反撃

1/1
1536人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ

☆00. 反撃

「な、なんでおまえが……おまえ今日は用事があるって」  はい証拠ゲット。  しょっぱなからお見苦しい場面で申し訳ありません。  ベッドのうえには裸の、いまにも没頭しようとしていた夫と、隣には―― 「可哀そうだから録音だけにしておくわ」とランプが点灯するスマホを掲げ、「……にしてもだったなんてね。どう? なにも知らないわたしを裏切って気分がよかった?」  ベッドのうえの影は答えない。ふぅん。黙秘権があるとかなんとかってやつか。  じゃあ。追い込むしか、ないよね。 「おまえいったい……」はいはいあなたの話は聞いていませんよーだ。無視してわたしは、扉の影に隠れていた人間に声をかける。「入って」と。  すると影が動いた。みるみるその目に驚愕の色が浮かぶ。「そんな……」  いやいやうちの旦那を誘ってわたしの知らないところでこそこそ裏切ったのはそっちでしょう。なにが、『そんな』だよ。  と内心で毒づくが、……まぁ、想定の範囲内。 「証拠はほかにもあるのよ」とわたしは言い、「……そのままの格好だとなんだから、着替えてからリビングにいらっしゃい」  そしてわたしは彼の背に手を添えて先に寝室を出て行く。……もう、わたしが、このおうちで眠ることは未来永劫二度と、ないだろう。情事の舞台にされたんだもの。  わたしの復讐はここからである。これは、――騙されていたわたしが反撃を企て、そして実行するまでの物語。  *
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!