もう、離さない

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もう、離さない

次の休日 桔梗の花束を持って墓地へ向かった。 墓の周りを掃除し、線香を手向け、 花を供えた。 久しぶり。 この間、君のお母さんに偶然会って 君のことを聞いた。 でも、偶然じゃないんだろう? 僕に会いたくなって、僕とお母さんを 会わせてくれたんだよね。 僕は、勝手にそう思ってる。 君は、桔梗は好きかな? 聞いてなかったけど、好きだと良いな。 花言葉を知ってる? 「永遠の愛」だよ。 今でも、君に会いたい。 君に、もう一度触れたい。 「愛してる」と言いたい。 もう、今世では、叶わないけど、 また、君を探すよ。 きっと見つける。 お母さんから腕時計を受け取ったよ。 僕に渡したのは、同じ型の別物だったんだね。 離れていても、僕たちは同じ刻を刻んでいたんだ。 机の引き出しから腕時計を取り出したら、 ちゃんと動いていた。 いま、はめてるよ。 君の時計は、ベルトを外して ペンダントにして、いつも僕の胸の上にある。 これからは、ずっと一緒だよ。 別れてからも、君を忘れる事なんて、 できなかった。 これまでは、辛いときに思い出の場所に行ったけど、 これからは、良いことがあった時に、 思い出の場所に行くよ。 もっと素敵な思い出を増やしていく。 ここに来るときは…、 今度は、泣きに来ようかな。 つらい時。 それで、君に慰めてもらう。 良いだろう? 私のことは忘れて幸せになって欲しいって? それって、努力して出来る事じゃないだろ? そう思うなら、早く生まれ変わって、僕の側に来て。 もう、サヨナラなんて言わせない。 ずっと一緒だよ。離さないから。 また、来るね。桔梗の花を持って。 でも、花は、持って帰るよ。 ここに供えていったら、 枯れてお墓が汚れてしまうだろ? 君の場所は、汚れて欲しくない。 だから、花束は君の家に持って行って、 飾ってもらう。 もう、三回忌なんだね。 君がいないなんて、まだ信じられないよ… じゃあ、また来るね。
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