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9.ヤキモチ
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「先生、今日はごめんね……。なかなか連絡が出来なくて」
蓮と別れて自宅に避難してから急いで先生に電話をかけた。
結局、蓮はあの後自宅までついてきた。
私を紳士的に家まで送り届けたつもりなのか。
それとも、本気で先生との仲を引き裂くつもりなのだろうか。
……いや、考える必要もない。
彼の選択は間違いなく後者。
『何か連絡出来ない事情があったんでしょ』
「あ……、うん」
『その代わり、何処かで必ず埋め合わせしてね』
「勿論! 絶対、ぜーったいするからね!」
先生はいつも冷静だ。
心が狭い誰かさんとは違って、目の前で彼女の肩を抱かれたくらいでは簡単に動揺しない。
これが蓮なら、間違いなく相手の襟元を掴んで拳を上げるだろう。
性格を知り尽くしてる分、考えなくても目に見えている。
「先生……」
『……うん?』
「柊くんにヤキモチ妬いちゃった?」
私が蓮に肩を抱かれた時の心境が知りたかった。
先生は感情を取り乱したりしないから、こうやって聞き出さないとわからない。
勿論、ヤキモチを妬いて欲しい。
『妬いたよ。でも、教師という立場上、表情には出せないし』
「うん、わかってる」
ーーそう、わかってる。
だけど、男は蓮しか知らない分、いまこの瞬間さえもう少しムキになって欲しかった。
教師としての対応は正解だと思うけど、その冷静さが少し物足りなくてたまにもどかしく感じる。
『何となく……。いや、俺の勘なんだけど。柊くんってさ、梓に気があるんじゃないの?』
一瞬ドキッとした。
ズバリまさかの正解なのだが……。
「へっ? 何で?」
先生の気持ちを汲んでわざとすっとぼけた。
確かに蓮の言動から推測できる。
『柊くん、普段はあんなにいい子なのに、今日は梓が一人で職員室に行くのを嫌そうにしていたから』
「プッ……。柊くんがいい子だなんて」
『去年担任だったから彼の事はよく知ってるよ。勉強面ではトップクラスだし、素直だし、愛想がいいし、他の先生にも好かれているし』
「えっ、あの蓮が勉強面でトップクラス?」
『ひょっとして、柊くんの事を蓮って呼んでるの?』
「あっ、みんなが柊くんの事をそう呼んでいるから……つい」
しまった……。
先生と電話中だと言うのに、ついボロが。
慣れというものは非常に危険。
でも、バカでエロで意地悪な蓮がクラスでトップの成績?
信じられない。
レベルの低い会話に野性剥き出しの本能。
それに、夜遊びばかりしているからてっきりバカだと思っていた。
先生達がテストの答案を返却する時に褒めるどころか『前回よりちょっとだけ点数が落ちたな』しか言わないから、勉強が出来るかどうかさえわかんないや。
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