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11.蓮と付き合う可能性
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「梓、あのね。この場では非常に言いにくいんだけど……」
「 ん、紬。どうしたの?」
「梓と蓮くん、また付き合い始めたの?」
「まさかぁ、そんな訳ないじゃん!」
「俺はやり直す予定だけどね」
一年と三年で同じクラスになった親友の紬。
茶髪のストレートで肩甲骨まである長い髪。
童顔でぽってりとした唇が特徴的だ。
紬とは一年の頃に名前順が前後で、アイドル話が盛り上がって仲良くなった。
そんな今は、教室で紬と二人でお昼ご飯を食べている最中だが、蓮はわざわざ椅子を持参して勝手に相席。
更に会話にまで割り込んでくる。
紬は金魚のフンのように付きまとっている蓮を毎日傍で見ているから、きっと何かを感じ取ったのだろう。
彼女自身も同席している蓮の前で、こんな話をするのはかなり勇気が必要だったはず。
でも、空気を読んで手紙やLINEで聞けばいいのに……。
因みに先生と交際してる事を紬には内緒に。
先生の解雇や自身の退学がかかっているだけに慎重に。
だから、彼女が知る分の私の恋愛は蓮が最初で最後の人。
「じゃあ、梓は俺と付き合う可能性、何パーセントくらいあるの?」
蓮は私の恋愛事情を知ってるクセに、箸でつまんだご飯を口にほおばりながらイジワルな笑顔を向ける。
しかも、紬の前で窮地に追い込んでくるとは。
「はっ?」
「だ〜か〜ら〜。誤魔化すなって。わかってんだろ?」
しつこいなぁ。
『わかってるのはお前だろ』って言ってやりたいけど、そうもいかず……。
「私も蓮くんと梓が付き合う可能性が何パーセントか知りたい!」
「うっ……」
事情を知らない紬までもが蓮の質問に加担する。
お陰で逃げられなくなった。
はっきり言って、蓮と付き合う可能性は0パーセント。
しかし、これをどストレートに言ってしまったら、さすがの蓮も凹むはず。
しかも凹んだ勢いで私と先生の関係を紬にバラしてしまったら……。
先日、数学ノート回収の件でグレーゾーンを攻めてきたからやりかねない。
「じゅ、10パーセントくらいかなぁ……」
全くその気はないけど、おまけのおまけで言った。
蓮との可能性なんてゼロ、ゼロ、0〜。
私には高梨先生という最高に素敵な彼氏がいるのに、浮気が原因で別れた元彼と付き合う訳がない。
ないないない!
絶対ないっ!
それなのに、蓮は……。
「マジ……? 10パーセントもあるの? よっしゃ~~~!」
教室中に響き渡るくらい歓喜の声を上げた後、クラスメイトがお昼ご飯を食べている教室で。
親友の紬の目の前で……。
椅子が倒れるほど勢いよく席を立って、私に覆い被さるかのように抱きついてきた。
すると、箸でつまんでいた卵焼きがコロンと床へ落下していく。
「……っっ」
正気なの……?
教室にはあんたと二人きりじゃないんだよ。
この様子はクラス全員の目に触れているんだよ。
それに、私は先生と付き合ってるって知ってるでしょ。
私のおまけのひと言が発端となってしまい、クラスメイトから一斉に視線を浴びて誤解を招いたのは言うまでもない。
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