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6.邪魔に入る蓮
蓮から衝撃的かつ突拍子もない決意を告げられた日の翌日。
別れてからめっきり大人しくしていたはずの彼だったが、この日を境に驀地な行動が波乱を導く事になるとは、この時は思いもしなかった。
キーン コーン カーン コーン……
「じゃあ、今日の授業はここまで」
6時間目終了のチャイム音と共に高梨先生の数学の授業が終わった。
授業中は勉強どころか先生しか目に映らず、うっとりした瞳でラブビームを送りながら心地よい声を身体中で感じている。
実は数学が苦手。
だから、わからない箇所はデートの時にマンツーマンで教えてもらっている。
先生は私の将来を想って一生懸命教えてくれるけど、それでも理解できないからどうしても好きになれない。
だけど、理数系の大学志望が故に受験に数学は欠かせない。
「今日の日直は……えーっと……菊池だな。みんなのノートを集めてから私の所に持って来なさい」
「あっ、ハイ!」
先生が日直当番の私にこう言う時は、だいたい密会デートのメモを渡す時。
だから期待で胸が弾んだ。
ところがノートを集めようと思って席を立った瞬間、蓮は斜め二つ後ろの席からピンとまっすぐに手を上げた。
「センセー!」
「ん……、柊。どうした?」
「俺もノート運び手伝いまーす」
すっかりメモの事で頭一杯になっていた私達に予想外の展開が……。
しかし、先生はさらりと返答する。
「ノートはそんなに重くないから日直だけで十分だよ」
すかさず断ったが、高梨先生の存在が気に食わない蓮は挑発的な態度に。
「俺がせ~っかく大変な役割を分担しようと思っているのに、そんな簡単に断るの? それとも、先生は菊池と2人きりがいいから俺が邪魔なの?」
蓮が冗談交じりで難癖をつけた。
そのせいで教室中はドッと笑いに包まれる。
だが、笑ってないのは私と先生と蓮の三人だけ。
先生は私達の関係が蓮にバレている事を知らない。
チラッと上目遣いで先生の方を見ると、若干口元が苦笑いをしている。
「柊……。つまらない冗談はやめなさい。手伝おうとしてくれる気持ちは嬉しいよ。だけど、お前だけ特別に成績を上げられないからな」
「はーい」
先生は小学生のように茶化してくる蓮に大人な対応。
どうやら引き下がった模様。
だけど、私は蓮の爆弾がいつ暴発するかと心配している。
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