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8.イケメントリオ
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「最近、大和と奏とは遊ばないの?」
「夜、遊んでるよ。クラブで……」
先生に蓮との仲を誤解されたまましぶしぶと教室に戻る途中、暫く疎遠になっていた他クラスの蓮の親友 大和と奏の近況を聞いた。
蓮、大和、奏は1年生の時からの仲良し三人組。
その名もイケメントリオ。
正直、そのネーミングはダサいと思っているけど、気付いた時には周りからそう呼ばれていた。
童顔でアイドル系の蓮
金髪でワイルド系の大和
美形で王子様系の奏
この三人組は、揃って歩くだけでもパッと目を引く存在で、ブティックに並んでいるマネキンそのもの。
小さな顔でモデル並みにすらっと高い身長に、見惚れるほどの美形。
三人はそれぞれ個性的で、文句の付けようがないほどのイケメンだ。
当然、校内でも有名人。
どの学年にもファンは存在する。
例えいま芸能人になったとしても、本校の生徒は誰一人驚かないだろう。
彼らとすれ違いざまに振り返らない女子なんてほぼいないし、目をハートにして追いかけたくなるほど魅力的。
私も蓮と付き合う前は、すれ違いざまに眺めるファンの一員だった。
そんな私は、昔からイケメン好きだった。
特にアイドルのようなかわいらしい顔つきの蓮が劇的にタイプ。
イケメントリオの中でもダントツで蓮。
初めて見た瞬間、ハートは一瞬で射抜かれた。
だけど……。
いざ蓋を開けてみれば、しょーもないエロ。
しかも、尋常じゃないほどバカ。
あんなにキレイに整っている顔つきでも、性格は欠点だらけ。
でも、完璧過ぎないギャップも私の中ではどストライクだった。
「私に構ってないで、いつも蓮に引っ付いている花音と遊べばいいじゃん」
「だ〜か〜ら〜。その返事がマジでウザっ。ってか、花音いま関係ねーし。俺はぜってーお前とやり直すからな」
「いい私の事は加減諦めてよ。新しい彼氏が出来たんだってば。昨日から知ってるでしょ」
「無理! 誰が彼氏になろうと、お前が俺の所に戻るまで諦めない」
「蓮〜〜〜っ!」
蓮は放課後もずっとこんな調子で私に付きまとう。
私なんて放っておいてさっさと家に帰ればいいのに、帰り支度が済むのをわざわざ隣の席で待ち構えている。
荷物をまとめて振り切るように足早に教室を出ても、何故かしつこく追いかけてくる。
まさか、一緒に帰ろうとしているの?
蓮のせいで先生から受け取りそびれたメモの代わりに、これからスマホでメッセージを送らなきゃいけないんだよ。
梓はストーカー並に付きまとう蓮にクルリと振り返る。
「もしかして、私と一緒に帰るつもり?」
「そうだけど。……まさかお前、また体育館の用具室であいつとコッソリ会おうとしてるつもり?」
蓮は人通りが多い廊下で、高梨先生との二人だけの秘密を悪びれる様子もなく口にした。
慌てて蓮の口を両手で塞ぐ。
「バカッ……。どうしてそれを今ここで言うの? 誰かに聞かれたらどうするのよ」
口を塞がれて嫌がる蓮は手首をムンズと掴んで解く。
「はぁ? そんなの知らねーし俺には関係ない」
「蓮〜〜〜!」
蓮は別れた今も苦しめてくる。
相変わらず面倒くさいヤキモチ男だ。
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