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(わー、ご飯、でっかいね~、トマ)
俺の名前はトマ。シンには人間が大きなご飯に見えている。まあ、十年前にこの星に偵察に入った時は俺も同じように思ったものだ。
(まあな)
(それに、いっぱいいる)
(ここは街だから)
この国の通勤時間、人がとりわけ多いと感じる時間帯である。俺達は跳び急ぐ。シンはバッタ型の宇宙船でこの星に降って間もない。偵察隊だった俺は近年暮らしていた富士田のアパート向かう。
偵察隊の一人だった俺はここで十年の生活を終え、移住について報告予定だった。その前にバッタ船が大量に降ってしまうなんて。部屋の中に少し前に別れた富士田が眠っていた。彼は四十歳、独身、おっさんに分類される。
(富士田、悪い。戻ってきちゃったよ)
この部屋はやっぱり居心地がいい。愛着もある。
(富士田、ちょっと急いでいるから借りる。悪いな)
俺は富士田となって立ち上がった。
(トマ、俺は?)
十年ぶりに再会したシンが俺に向かってそう言った。こいつの寄生先か、どうするかな……。
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