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 この国で暮らしてもう何年になるだろうか。富士田としては五年以上にはなる。シンは一度春野を離れ、同じ支社の事務員、桜井ほのかに寄生した。一年ほどして春野に戻った。シンは春野の気持ちを知って、密かにキューピット役を務め、二人が結婚へという流れをつくった。  俺はシンの順応性にただただ驚いた。 (居心地悪くならなかったのか?) (どうして?) (だって、俺なら気まずい) (二人が一緒の時は俺は春野の目の奥で目をつむる。でも、俺は春野でもあるから、温かくてやさしい気持ちに包まれる時間は穏やかで俺もうれしくなる) (へぇー、今まで俺はそんな風に考えたことなどない) (トマ、今からでも間に合うと思うけど?)  そう、シンに言われ、思い出したことがいくつかあった。偵察の任務のために余計だと思われることは省いて、減らして、取り除いて俺は富士田としてやってきたのだ。富士田の恋心や怠け癖が出そうになると、俺がつぶしてきた。果たして間に合うのだろうか?
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