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(富士田の後輩なんだが、春野ってんだ、どこかおまえに似ている気がするし、いいやつだからうまくいくよ。きっとな)
(いいやつなんですよね。その人間)
シンは俺に似ている。兄弟みたいなものだから当たり前だが。
(ところで、シン。おまえの周りに抜きん出て頭のいいやつはいないか?)
(それは長老でしょ。なんで?)
(長老よりはうんと若くて元気なやつ、集められるなら多い方がいい)
(じゃあ、あいつならいいかな。最近の片割れ、ミケ、俺には似ていなくて、トマの上を行くかも。それと長老筋のアルとマミ、それから……)
(ミケ? 俺がこの星に来ている間に?)
(うん。ミケは船の中で)
(そうか。話はおいおい聞くとして、みんなに集まるよう言って)
いつもとは明らかに違う朝、いつも通り富士田が勤める会社借り上げアパートから歩いて出社した。誰にも見えないだろうが、ミケたちも合流した。会社入り口で春野に声をかけられた。
「富士田さん、遅刻じゃないっスか」
「いいんだ。眼科に行くため今日は半休もらっているから。午後から一緒に回るよ」
「そうっスか。俺はいつもの定食屋で昼メシ食ってます」
頭を小さく下げて背を向けた春野の肩を軽く叩いて「あとでな」と。その肩先にいるシンに(またな)と送る。富士田のかかりつけ、棚橋眼科に向かった。
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