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テレビでは世界規模でイナゴの大群が現れたと大きく取り上げられ話題になっていた。バッタ型の宇宙船には俺達フネンが一千機にそれぞれ約百個体だから、およそ十万がこの国に降ったことになる。その宇宙船にはフネンと見た目は同じだが、少し違う個体シリがほぼ同数乗っていた。
つまりこの国に二種族、計二十万余、世界中に二十万余をセットに降ったことになる。どの国にどのくらいのバッタ船が降ったかは俺にもわからない。イナゴの死骸大量発見!などというつぶやきなどから簡単な集計はできるかもしれないが。ただ、人間にはバッタ船は昆虫という形で見えるが俺達フネンやシリは見えず、この時点では何が起きたのかは誰にもわからないはずである。
「富士田さん、遅いっス」
「待ち合わせの時間は守った。午後はどこを回る予定だ?」
「嶺岸デンタルクリニックと山崎整形外科。少し時間をおいて次は猪俣……」
富士田と春野は製薬会社の営業の仕事をしていて、医療関係機関には出入りしやすい。総合病院でも精鋭フネンを医師達の近くに置いてきた。他のフネン達は薬局の薬剤師、児童や生徒の帰宅を促している教師などに適当に振り分けながら歩いてきた。
「富士田さん、それがっスねー」
何についてのそれがなんだ? と思いながら春野を見る。
「車、持ってこれなかったんス」
「ああ、わかってる。今日は予定通りは無理だ。電車も動いていない」
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