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 眼科で眠りこけていた人も街の中で眠ってしまった人も、多分、もう目覚めない。シリが寄生した人間は眠ったように死ぬ。シリはまず脳の機能を止め脳から食べる。死ぬと腐るので、眠らせたまま皮膚だけ残し中を食べ尽くす。人の形の着ぐるみ状態になる。  俺達フネンも脳に入りはするが、その動物の生活の邪魔にならないよう脂肪などから食べるので、動物自体にほとんど変化はない。人間の場合、その眼の奥で様々なものを見、時々眠らせて身代わる。今の富士田がその状態だ。そして、春野の眼の奥でシンが春野について、この世界について観察、猛勉強中である。  二種族に雌雄はなく、二分裂によって増える。分裂の周期はシリがフネンよりかなり早い。同動物内にシリ複数が共存できるので、ネズミサイズなら一週間から二週間ぐらいだろうか。ただ、人間一人を食べ尽くすのにどのぐらいかかるかという統計はまだない。  分裂は一個体あたり十回から二十回と言われていた。前の星での話で、分裂の頻度は個体にもよる。寿命は頻度が高いシリの方が短く、フネンはエネルギーをあまり使わないからか、平均二倍だと言われていた。  その星では一番大きな動物がドブネズミサイズで、大量にいたため俺達はそれを食料とし、争うことはなかった。先に脳に到達したシリとフネンのどちらかがその動物を占有するという暗黙のルールがあったからでもあるのだが。
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