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分裂の頻度が高いシリはそれこそねずみ算式に増えていく。フネンだけならさほど問題はなかったのだろうが、シリが増えるほど食糧難になる。それを早くから懸念した長老が動物の豊富な星を探そうと俺達偵察隊をいろいろな星に送り込んだ。
十年前、偵察隊の一人としてこの国に降り立った俺は調査を兼ね、いろいろな人の中で暮らした。富士田として落ち着くまでに男の時も女の時もあり、小学生からおっさんまで様々な年齢の人間といた。偵察隊が俺達フネンのみの構成だったのには今あるものに大きな変化を起こさず偵察ができるという理由からだった。
前の星ではあまり深く考えることなく過ごしていたが、この星で、人の目の奥でこの国の常識を見、考えることが多くなった。そのせいかどうかわからないがここでは一度も分裂していない。俺は前の星で初めての分裂し、その片割れがシンだ。二分したのに全く同じではないのが不思議ではあるけれど、誰も疑問も持たなかった。
フネン族はこの星では分裂できない。偵察隊の全員がそうだったのだから間違いないのだ。俺達がここで暮らすのはリスクが大きすぎるという偵察結果を知らせる前にバッタ船が到着してしまった。
シンの話では数年前にフネンが生かしていた動物とシリとフネンを乗せたバッタ船、一千機を格納できる母船でその星を脱出したのだという。いくつかの他の星でも生活を試しながら、移動。この星に辿り着いた時点で、ほとんどの母船が焼け、大量のバッタ船を一度に降らせることになった。
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