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「トマ、じゃなくて、富士田さん、この人、なかなか(むず)いっス。だいぶ慣れましたけど。まだこの姿で仕事は無理っス」 「いや、立派に春野だよ。たった一週間で会話ができるまでになるなんて、さすが俺の半分だ。春野は真司(しんじ)だからこれからはシンと呼んでもいいぞ。ちゃんと春野に食事をさせるのを忘れないこと。シンのご飯もなくなるからな」  この国では一週間ほどの間に専門機関ができ、眠った人を収容、人体に何が起きているのかを調べ始めている。まだ死人は出ておらず、「眠り姫症候群」などと呼ばれることも。食べ慣れている小動物に手を出したシリもいて、そろそろネズミや子猫などで死に至るものが出てくるだろう。そうなれば「眠り姫」でも「白雪姫」でもないことがわかるかもしれない。  そのうちシリが見つかり、その駆除や除菌目的の研究や試験が行われ、結果、製薬等が急がれるという動きになるのは確実だ。  シリだけを殲滅して俺達フネンの存在は隠す。いずれフネン族のために分裂を促す何かを探す。仲間にはそういった研究所や医療関係、そして製薬関連に勤める人たちを寄生(行き)先にと考えての初動だった。もちろん、人に絶対必要な分野の人達を殺さないためでもあった。フネン族は寄生先を変えることも可能なので、必要とあらば政府要人をも寄生(行き)先とできる。  表向きには「シリが絶滅」とし、こっそりと培養、分裂させる。この星には自国民の命を大切にしない国ややたらと他国に因縁をつけたり戦争をふっかける国があちこちにある。俺はそれをシリを使ってなんとかできないものかと思い、考えていた。
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