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勇敢な空手オタクの玲 後編
そしてこの後、あっと言う間に
絶体絶命のピンチを迎えたヘタレの玲は……
人生で初めて目撃をしたパンチパーマの変なおじさんに
やたらとジロジロ見られながらも平静を装っていたけれど
そんな事よりも、この後いきなり、パンチパーマの後ろから!
*****
「おい涼子~…本当にこの地味な嬢ちゃんが
あの龍崎璃音のイロなのか?あんまパッとしねぇ女だなぁ」
「そうね佐竹さん、私も玲ちゃんの事を美人だなんて思ってないし、
そもそも この程度の顔の女を可愛らしいと思った事は一度もないわ」
なんと突然、Clubベルサイユの荒木涼子が現れたから!
いきなりの登場にビックリしすぎた玲は勿論いつもの様に
冷凍のアジフライみたいにカチカチに固まっていたけれど……
そんな事よりも今の状況は、どう考えても絶対にヤバいから!
(佐竹さんって事はつまり…このパンチパーマのオジサンが
お金の為なら平気で人を殺す、元組長の佐竹次郎なんだから、
とにかく隙を見つけてダッシュで走って逃げた方がいいよね絶対!)
と誰よりも平和的に、
そして建設的にスタコラサッサと逃げる準備を始めていたのに、
この後も佐竹の隣でワナワナと、
今にもキレそうな眼差しの涼子はこのままの勢いで
「えぇ そうよ、10年前に桜ヶ丘でこの女を見た時も
久し振りにClubベルサイユでこの女と再会をした時も……
いつでも私はこの女の事を、地味で平凡なブスだと思っていたわ!」
と大きな声で玲をブスだと誹謗して
しかもこの後ヘタレの玲を指差しながら
「でも璃音が選んだ唯一の女は、この一条玲なのよ!
だから私は許さない…私の璃音を奪った女を、私は一生許さないわ!」
こうして最後は夜叉みたいな怖い女になったので
初めてClubベルサイユで彼女に会った時の事を思い出した玲はこの瞬間、
もちろん悲しい気持ちになったけど、しかしこんな人生最悪の場面でさえ
対人スキルがゼロの玲は、結局無言で立っている事しか出来ない訳だから
*****
つまり このタイミングで唐突に
「そうかそうか、じゃあそうだなぁ
お前に嬢ちゃんの始末を任せてやるから好きにしな?
さてさて どうする涼子、この嬢ちゃんを外国に売り飛ばすか、
それともシャブ漬けにして裏のソープに沈めるか、どっちがいい?」
な~んてモロに警察案件の
めちゃくちゃヤバい提案をされてもヘタレのコミュ障は案の定、
(はあぁあ??そんなの どっちもイヤに決まってるでしょ!)
…って感じのカッコいい反論は全く言えなかったので、今日も黙って下を向きながら
一体どうやって佐竹達を振り切って、いつダッシュで逃げれば良いのかと……
そんな事を平和な頭で あーだこーだと考えていたのに、この後、いきなり突然に!
「ダメよ佐竹さん、かりに今すぐこの子をソープに沈めても、
あっと言う間に足が付くから、どのみち私達は璃音が雇った殺し屋に、
一番酷い方法で始末される事になるわ。だから証拠を残さない為にも
今すぐ画廊で この女を撃ち殺して、そして今夜中に死体を山に埋めるのよ!」
「んん?今ここでヤルだと?だがまぁ確かに……
璃音はいざとなったらマジで冷酷な男だからなぁ、
じゃあ あんまり気は進まねぇが、とりあえず今ここで殺るか?」
こうしてめでたく銃殺刑が決定したので
この瞬間に人生最大のピンチを迎えたヘタレの玲は、もちろん無難な脳内で……
(はい?殺す?私を殺して山に埋める?なにそれ?どんなサバゲーなの?
…って言うかこの人達はそもそも一体何者なの?新種の動物?それとも宇宙人?)
って感じの饒舌な独り言を呟いていたけれど、やはり今はそんな事よりも!
(えっと今ここでやるって事はつまりそのぉ……
早い話が今すぐ私は佐竹に殺される訳だから、
この場合はえっと、えーっと、とにかく逃げなきゃダメって事じゃん!)
この段階になってようやく玲は今の状況を理解できたので
もちろん今すぐダッシュで逃げようとしたのだが……
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