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この時すでに佐竹次郎が胸元から出した黒いリボルバーの銃口は
カチッ……!
「おーっと、動くなよ~?嬢ちゃん……」
確実に玲の背中へと向けられていたので
こんな間近で背後を取られた玲は勿論、一歩も動く事が出来ないけれど
だからと言ってこのまま佐竹に撃ち殺される訳にはいかないから、とにかく今すぐ勇気を出して
「あのっ!こんな事をすれば、璃音さんが怒ると思いますよ?
た、た、例え皆さんが!私を殺した証拠を全然残していなくても、
絶対にそのぉ、璃音さんは、えっと かなり!物凄く怒ると思います!」
と残念すぎる意味不明な命乞いをしてみたが……
「なんだいそりゃ!小学生の弁論大会か?」
やはり結果は玲の惨敗だったから、
いつピストルの引き金を引かれてもおかしくない危険な状況で
何がなんでも助かりたい玲は、なんとかして奇跡を起こせないものかと
残念な頭をフル回転させていたけれど、これが負の連鎖と言う物なのか、
それとも まさにこれそこが、ヘタレの悲しい運命なのか、
今の玲にとっては、どっちでも変わらない事かもしれないが……
とにかくこの後、唐突に!
「おやおや~可愛いお嬢さん、なんだかとっても残念ですねぇ、
あの時に勇気を出して騎乗位を頑張ってくれたら~命だけは助けてあげたのに~」
なんと、このタイミングで
いきなり大きな階段の踊り場に現れた仮面のエスパーから
「でもまぁ佐竹組長は~貴女の様にパッとしない地味な女には
全くぜんぜん興味はありませんからねぇ。御愁傷様でした~、ウフフフ~」
あいかわらず気持ちが悪い裏声で
早くも『お悔やみ』を言われてしまったので……
(どうしよう、もうこうなった以上は
最強の必殺技であるダブルキックを同時進行で
佐竹とエスパーの後頭部にカマして逃げるしかないよね?)
こうして遂にヤケを起こしたヘタレの玲は
最期までキックに拘る勇敢な空手オタクとしての人生を
迷路みたいな画廊の中で、ヒッソリと終わらせる覚悟を無理やり決めたけど
やっぱりそんな事よりも、人生の最後は何がなんでも絶対に
大好きな璃音に感謝の気持ちを言い残したかったから……
「悪いな~嬢ちゃん、今夜必ず璃音も殺して
お前の隣に埋めてやるから、二人共あの世で幸せになってくれや」
と最後までムカつく佐竹が何かを喋った後すぐに
シーンと静かな画廊の中で……
カチャッ!とピストルのトリガーが引かれるイヤな音を聞きながら
(ごめんね璃音さん……
やっぱり、ぼっちの私に奇跡は起こせませんでした……
でも私は貴方の事が誰よりも大好きだから、天国に行ったら
毎日ずっと璃音さんの幸せを、草葉の陰から祈っていますね。
じゃあ私は先に行くけど、どうか幸せになってください璃音さん、さようなら……)
まるで少女マンガのヒロインが残した遺書の様に、
大好きな璃音に向かって心の中で感謝と別れを告げた玲は
次の瞬間、一か八かの大勝負をする為に、
ピストルを持った佐竹に背中を向けたままの姿で、意味不明なダブルキックの構えに入ったが
やはりこの後、薄暗い画廊の中は無情にも……
パーン!パーン!パーン! と乾いた3発の銃声が響き渡っていた。
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