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Clubベルサイユの女神
そしてなんの計画性もなく、
何も考えていない空っぽの頭で歓楽街に到着した玲は
いつもの様にボーッとしながら今回の目的地である、
キンキラキンのダイヤモンドビルを目指して駅前通りを歩いている最中に……
*****
「あれぇ?メンバーさんじゃ~ん、超~久し振り~!
て事わぁ、やっぱりメンバーさんも円行寺さんに誘われたのぉ~?」
なんと、いきなり突然!
全く久し振りではないハルカとバッタリ会ったので、
「あっ、こんにちはハルカさん」と無難な挨拶をしてみたら
「なんかぁ、いきなり円行寺副社長から~、やぁ久し振りだね可愛いハルカ?
みたいなイミフの電話が掛かってきたからさぁ、マジでビックリしたよね~メンバーさん。
て言うか そんな事よりも~毎日メンヘラの涼子ママが~、今さら心の病気で入院しましたー、
とか言われてもぉ…こっちは給料もらってないから、ぜんぜん可哀想とは思えないし~、
つうか失恋のショックで個室に入院するならさぁ、給料払ってからにして欲しいよねぇ~全く!」
と相変わらずマシンガントークのハルカは今日も
元気に語尾を伸ばして給料の愚痴をガンガンこぼし始めたので……
思わず玲も前回と同じ様に
「そうですよねぇ…」と適当な相槌を打っていたのだが
そんな事よりも この後ハルカは、なぜか唐突に、
「でもまぁ、あの店を円行寺副社長が経営する話がホントなら、
とりあえず私も週3のバイトで残ってみようかなぁ、なんて思うけどさ?」
でも結局は給料次第なんだよねぇ~…って感じの意味深な事を話し始めたから、
(えっと それってつまり、『あの』円行寺彰さんが
Clubベルサイユの新しいオーナーになっちゃう話をしているんだよね?
へぇ~?これはちょっと興味がある話だから、もう1回適当に返事をしてみようかな?)
と思った玲は、勿論このあと間髪入れずに
「そうですよねぇ~…」と再び話を合わせてみたけれど……
やはり、そんな事よりも、まるで女神の様なハルカは突然このままの勢いで!
「だよねぇ?やっぱメンバーさんも悩むよねぇ?だって このまま店に残ったらぁ、
まだオープンする前の~、ピッカピカのダイヤモンドビルの龍崎宝飾でぇ~、
24金の高級ネックレスを貰えるんだからさ?だからハルカも超~悩んでるんだよね~」
まさに最高のタイミングで、純金の話をしてくれたから!
「そ、そ、そうですよねぇ~!」と更にカオスな返事をした玲は、
まるで涼子の家をハルカと二人で
いきなり訪ねた あの日の再来みたいに、この直後!
「じゃあメンバーさんも一緒に行こうよ~」
「はい、もちろん御一緒します!」
こうして再びハルカと一緒に
まだオープンする前の、龍崎ダイヤモンドビルへと向かう事になったけど
実はたったの3時間で華麗にバイトをクビになり、しかも貰っていない給料が
これまた たったの三千円ポッキリであると言う、不都合な真実は、
この時すでに闇の中に葬られていた事は、もちろん今さら言うまでもない。
*****
そして今日も、
一方的に喋ってくれる便利なハルカと二人で一緒に
テクテクと街を歩いて目的地を目指し、
あっと言う間にプラチナカラーの大きなビルへと到着した玲は
(すご~い!なんかキラキラしてる~、まさにダイヤモンドビルって感じですよね~)
…とは絶対に言えない残念なコミュ障なので、
今日も元気に無言で新築のビルを見上げていたが、
次の瞬間、ハルカの真後ろで
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