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やはりココは高級宝石店なので
「いらっしゃいませ お客様」
「お客さま?なにか~お探しですか?」
こうして早くもメッチャ苦手な店員さんが向かってきたけれど
「いえっ、大丈夫です 欲しい物は、
えっと、そのー、じ、じ、自分で探しますから~」
だから私の事は放っといてくださいと
ハキハキ答えた挙動不審の怪しい玲は今まさに
絶対に負けられないバトルの火蓋を切ったので
このまま威風堂々とした態度でテクテクと歩いてカウンターに向かい、
誰が見ても非売品にしか見えない金メッキのペン立てを手に持って
そして意気揚々とハルカの所に行きながら
「あっ!ハルカさん、見てくださいよハルカさん!
こんな所に凄く高そうな金の置物がありますよ?
なんかこれって、夜の金塊みたいな筒型のデザインだから、
真夜中限定の…ワイルドな犬がメッチャ喜びそうなだなぁ~」
だって金色の筒なんだもん!と大きな声で話しかけて
愛する璃音を守る為、そして絶対に璃音の未来を守り切る為に
とにかく必死で意味不明な金塊の話を適当に振った後
「はああぁあ~!?ワイルドな犬~??どこどこどこーー??」
と本気でワイルドな犬を探しているハルカを華麗にスルーして、
次はポカーンとしている円行寺彰の隣で突然ピタッと立ち止まった後すぐに
「あっ!この銀色のワッカもナカナカいいですねぇ
めっちゃイケメンな円行寺さんにぴったりのブレスレットですよコレ!
なんか銀色のシェルターみたいで…凄くカッコいい腕輪だと思いませんか?」
「銀色のシェルター?えっとこれは銀色の輪っかじゃなくて
福引き用の磁気ブレスレットなんだけど、急にどうしたの玲ちゃん」
「大丈夫 大丈夫!
円行寺さんには絶対にこれが似合いますから。
ちょっと失礼して、私が勝手にハメちゃいますね、えいっ!
あれれれ~?ちょっとキツキツかな~?でもキツい位の方が~、
後からジワジワと磁気が~、ビンビンに効いてくる筈ですから、
だからやっぱり私はダントツで!この銀色のシェルターみたいな
キッツキツの腕輪を円行寺さんにオススメしたいと思います!」
と至って真面目に大きな声で
彰を相手に入院レベルの会話を済ませて再びウロウロと歩き始めていたけれど
この次に向かう相手は勿論、本日の最終ミッションであるラスボスの璃音の所だから、
これ見よがしに、聞こえよがしに、まるで本物の不審者みたいに大きな声で
「えっと、え~っと三千円の純金コーナーはドコかなぁ……」
って感じの危険な独り言を喋りながら、
ジワジワと璃音の元に向かう玲は殆どヤケだったのに
まさかこの後この店が、やけっぱちの玲よりも更に上を行く、
寡黙な天然イケメン社長の独壇場になる事を、勿論まだ誰も気付いていなかった。
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