初めてのお洒落

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初めてのお洒落

そして憂鬱な気持ちを引きずったままで自宅に帰ってきた玲は 滅多に家に帰ってこないわりには無駄に明るいアメリカ人の一条マリーから ***** 「玲ちゃんお帰り~!じゃあ今からお待ちかねの~、 楽しい楽しいメイクアップを始めるわよ~!オー!イェーイ!」 て感じの熱烈的な歓迎と、 早くも迷惑な予感が(ただよ)う、楽しいメイクアップの命令をされながら さっそくアメリカンテイスト満載なリビングの中に通されたが…… 北欧系のアメリカ人で、若い頃に人気モデルをしていた母親のマリーは今現在 ジュエリーデザイナーをしながらテレビ番組の司会なんかも結構やっている有名な芸能人なので 万年ぼっちで地味子の玲は、性格も容姿も自分とは正反対で 毎日必ずハイテンションな、美しい母親の事が少々苦手だったのに ***** そんな事はお構いなしと言わんばかりのマリーにグイグイと腕を引かれながら 大きな三面鏡ドレッサーの前に連れて行かれた玲はこのままの勢いで 「ついに今日からアルバイトよ~、玲ちゃん」 「ちょっとママ!何してるの?」 「玲ちゃんの仕事は接客業なんだから、 髪は可愛いアップにしようね~、ドゥーユーアンダースタン~?」 な~んてヤル気満々の母親に いきなり髪をポニーテールに結い上げられて おまけにピンクの可愛いシュシュを付けられてしまったが、 こんなにもトンデモナイ事をされている今の状況でさえ…… (あのぉ…こんなに恥ずかしい髪型で~、 外に出るとか絶対に有りえないんですけど~!) とは言えないヘタレの玲に出来る事は、 せいぜい黙って鏡を見つめる簡単なお仕事だけだから 少女漫画のヒロインみたいな可愛らしい髪型にされた癖毛(くせげ)の玲は心の中で、 とにかく恥ずかしい自分の姿にメチャクチャ困惑していたのに、 そんな玲とは真逆の上機嫌なマリーはニコニコとした表情で 明らかに地味な玲の(ひら)たい顔に、スタンダードな薄い化粧を(ほどこ)しながら…… 「やっぱ グロスはピンクで決まりね~。 うんうん、これで完成!ほらほら玲ちゃん鏡を見てー? 少しメイクをしただけで、こんなに貴女は可愛くなるのよ~?」 …って感じの上から目線な独り言を呟いた後すぐに 自信なさげに下を向いて固まった玲の顔を鏡の中から見つめてきたので ついつい玲も、鏡に映るメッチャ綺麗な母親と、 毎日必ず地味な自分をじーっと見比べていたけれど…… そんな事よりも次の瞬間、いきなりガチャッとリビングの扉が開いて、 そしてこのままの勢いで、
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