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オレンジ色の夕陽
そして人生初のオシャレなカフェテラスに到着した玲は
小さなお一人様用のテーブル席へと案内された後すぐに、
期間限定メニューとやらの、トロピカルなアイスティーを注文してみたが
なぜかこの後、唐突に……!
*****
「ねぇねぇ、あの人ってもしかして…龍崎社長じゃない?」
「うわぁ!龍崎さんと円行寺さんが一緒に歩いてるー!超かっこいいね~」
「えっ?どこどこ?…きゃああぁあ!二人共こっちに来てるし~!」
て感じの大きな声で、お店のお客さん達が
いきなりキャーキャーと騒ぎ始めた事に気が付いたので
えっ?何?と思った玲は取り敢えず、
なんだかザワザワと騒がしい方向に視線を向けてみたけれど
(えっと…あっちの道はレンガの長い舗道だから、別になんにも無い筈だよね)
と密かに呟くオタクの玲には何がなんだかサッパリ訳が分からなかったから
(まぁいっか、きっと私には関係のない事だし……)
こうしていつもの様にサッサとボッチのモードになって、
今すぐ自分だけの世界に入ってリラックスをする為に
鞄の中からお気に入りのラノベを出して栞を挟んだページを開き
騒がしい周囲を全て無視して、一人ぼっちでアイスティーを飲みながら
学園ミステリーの小説を読んで時間を潰していたけれど、
この時の玲は何故か何故だか、どう言う訳か、
オレンジ色の綺麗な夕日を眺めただけで、とても穏やかな気持ちになれたから
まさかこの後、人生初のアルバイトが、
そりゃあもうトンデモナイ事になるとは夢にも思っていなかった。
***************
そして最後に場面は変わり
キラキラと輝く6月の夕陽に照らされながら
騒がしい群衆に見られながらも威風堂々とした態度で
レンガの舗道を足早に歩く一人の男性がいたのだが……
高身長で目立つ風貌のこの男はいつもの様に
オープンカフェのテラスの中で、
キャーキャーと騒ぐ若い女達を冷めた瞳で一瞥した直後
なぜか全くこちらの方向を見向きもしない、
黒いスーツ姿の可愛い女をいきなり偶然見つけたが、
なぜか男はこの女を見た途端、
女の顔から一瞬たりとも目を離す事が出来なくなったから、
まるで吸い込まれる様に……
オレンジ色の夕陽に照らされた女の顔をひたすらジッと見つめていたけれど、
次の瞬間 男の耳に……
「龍崎社長?そろそろ視察のお時間ですが……」
と聞き慣れた部下の優しい声が鳴り響いたので
一瞬で我に返った男はこの後すぐに、
黒いスーツの女の顔から、ゆっくりゆっくり目を逸し……
そしてクルッと踵を返して広い歓楽街の中へと消えた。
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