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初めてのアルバイト
そしてオープンカフェでの休憩を終えて、
早速バイト先のレストランに到着した玲は
このままの勢いで店のドアを開けてみようと思ったが
お店の扉に派手な金色で描かれた
『Clubベルサイユ』の文字を見上げたその瞬間、
なんだか変な名前の店に強烈な違和感を感じたので……
*****
(えっと、ここはベルサイユって名前のお店なんだから
きっと絶対フランス料理の専門店…って事だよね?
でもでも どうしてレストランの名前にClubが入っているの?)
と思った社会情勢に疎いボッチの玲は、
なんだか怪しい、めっちゃ怪しいと心の中で戸惑っていたけれど
かと言って……
いつまでもこうして店の前でボーッと突っ立っている訳にもいかないので
(なんだかイマイチ訳が分かんないけど
一応ママが紹介してくれたお店だし……
とにかく店の中に入れば なんとかなるよね?)
て事を考えながら、勇気を出して店のドアを開けてすぐ
「はじめまして!あのぉ……
今日からアルバイトをする事になった一条玲です。
えーっと、店長さん~とかは 今ここにいらっしゃいますか?」
と人生初の自己紹介をしてみたら
店の中から黒いスーツの外国人男性が玲の前にやってきて、
そしてこのままの勢いで
「こんにちは一条さん。バイトの件でしたら
オーナーから話を伺っておりますので、こちらの方へどうぞ……」
と手招きをしてくれたので、
とりあえず無言で頭を下げた玲はこのまま彼の後ろを歩いてみたが
次の瞬間、いきなり玲の目の前に……!
「いらっしゃい玲ちゃん!大きくなったわね~」
と甲高い声でニコニコしながら
白いスパンコールのドレスをまとった見知らぬ女性が現れて
しかもこのままの勢いで、
「昔 何度かマリーさんの家に遊びに行った事があるけど、
私の事…覚えてるかしら?ほら、マリーさんが通販番組のレギュラーだった時に
私がデザインしたベビーパールのネックレスを紹介してくれた事があったでしょ?」
て感じの結構な早口で、
訳が分からない事を色々と質問されたから
(えっ?パールのネックレスって何?…って言うかこの人は誰?)
とは言えないコミュ障の玲は彼女の事を全く覚えていない状態で
「あの~…え~っと、その~……」
こうして碌な受け答えも出来ないままで固まりながら
「まぁ10年も前の出来事だから
流石に私の事は覚えてないわよねぇ、
だってあの頃の玲ちゃんは、まだ小学生だったんですもの~」
「ごめんなさい、覚えてなくて……」
と頭を下げて謝るだけで精一杯だった事は今さら言うまでもないけれど
そんな事よりも遂に玲は、この瞬間から正式に!
「いいの いいの。貴女は若いんだから
私の事なんて全然気にしないでいいのよ?
じゃあ少し遅くなったけど、一応自己紹介をしておくわ
私の名前は荒木涼子です。今日からよろしくお願いね
それとジュリアン?若い若い玲ちゃんに、今すぐ仕事を教えてね」
とメチャメチャ嫌味な涼子の自己紹介が終わった後で、
人生初のアルバイトが始まる事になったのだが、
そんなことよりも万年オタクの玲は勿論、キンキラキンに輝くこの店が……
俗に言う『お水』のカテゴリである事を全く理解できていなかった。
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